熱帯泥炭地では、近年の開発による排水のため、泥炭の有機物分解が進み、大量の二酸化炭素を排出しています。
また、乾燥した泥炭地はきわめて燃えやすく、毎年乾季には泥炭火災が生じ、農作物に対する被害や煙害による健康被害が深刻化しています。特にインドネシアでは、2015年に、210万ヘクタール(北海道の約4分の1)以上の非常に広範囲な地域で火災が頻発しました。50万人が上気道感染症と診断され、近隣国でも大きな問題になりました。また、火災による膨大な二酸化炭素排出は地球規模の環境課題となっています。私たちの提案である乾燥荒廃泥炭地の再湿地化と、泥炭湿地在来樹種の再植は、泥炭地問題の解決策の柱として認識されています。2015年の大規模な泥炭火災を受けて設立されたインドネシア共和国泥炭地回復庁は、5年間で200万ヘクタールの再湿地化と植林をおこなうという目標を定めています。しかしながら、真に泥炭火災と煙害をなくすためには、まだ解決されなければならない問題が多くあります。たとえば、広大な国家管理の森林区域に多く存在する乾燥化し劣化した泥炭地を、誰がどのように湿地化し植林していくのか、住民や企業が意欲をもって再湿地化をおこない、その地で農林漁業をおこなっていくためにはどのような方法が望ましいのか、さらには、木材の伐採・運搬、加工、利用、販売をどのようにおこなっていくのか。このような諸課題について、地元の大学、泥炭地回復庁、NGO、さらに多数の国際的な組織と連携しながら解決策を探ることに加え、実際に地元の人びとと協力しながら再湿地化プログラムを実践しています。これらの活動をとおして、泥炭地に関わる産業・政策や、また泥炭地周辺の人びとの暮らしに対して、自然環境に寄り添いつつも革新的な方法と新しい価値感をもたらすことが、私たちの目標です。